市民協働と行政職員に関する
全国自治体調査
実施機関
金沢大学人間社会学域地域創造学類
地域社会学研究室
実施年月
2022年2月
分析対象
全国805自治体
目 次
- 第1章 調査の概要
- 1.1 調査の背景と目的
- 1.2 調査方法
- 1.3 報告書の構成
- 第2章 地縁的コミュニティの活動状況
- 2.1 回答自治体の基本属性(人口・職員数)
- 2.2 市町村合併の状況
- 2.3 地域コミュニティの構造と自治会加入率
- 2.4 地縁型住民自治組織の実態と課題
- 2.5 協議会型住民自治組織の設立状況
- 第3章 ボランティア団体・NPO等との協働状況
- 3.1 テーマ型市民活動の実態
- 3.2 協働事業の実施状況
- 3.3 協働相手となる団体(詳細分析)
- 3.4 協働事業の推進体制(目的共有・評価)
- 3.5 協働事業実施の意義(11項目分析)
- 3.6 協働の課題(9項目分析)
- 第4章 中間支援組織と協働推進体制
- 4.1 中間支援組織の設置と運営
- 4.2 制度的基盤の整備(条例等)
- 4.3 協働推進指針の策定
- 4.4 協働によるまちづくりの進捗評価
- 第5章 行政職員の能力・資質と人材育成
- 5.1 協働推進に必要な職員能力の分析(28項目)
- 5.2 能力育成のための研修実施状況(28項目)
- 5.3 職員数の充足度と充実策
- 5.4 機運醸成の取り組み
- 第6章 協働推進のための施策と制度
- 6.1 協働推進に必要な施策(11項目)
- 6.2 協働に関する制度導入状況
- 6.3 地域担当職員制度の現状と課題
- 第7章 住民参加の手法と実態
- 7.1 計画段階での住民参加手段
- 7.2 実行段階での住民参加手段
- 7.3 評価段階での住民参加手段
- 7.4 ワークショップの開催状況
- 第8章 総合考察と提言
- 8.1 調査結果の総括
- 8.2 実践的提言
第1章 調査の概要
1.1 調査の背景と目的
地方分権の進展とともに、地方自治体には地域の実情に応じた行政運営が求められている。人口減少や少子高齢化、地域コミュニティの希薄化といった複雑化する社会課題に対応するためには、行政単独ではなく、地域住民やNPO、ボランティア団体等との「協働」が不可欠となっている。
市民協働を推進するためには、制度や仕組みの整備だけでなく、行政職員自身の意識変革や能力向上が重要な鍵を握る。職員が地域社会の多様な主体とどのように向き合い、信頼関係を構築し、協働事業をコーディネートしていくかが問われている。
本調査は、金沢大学地域創造学類地域社会学研究室が実施するものであり、日本学術振興会科学研究費補助金による研究の一環である。全国の地方自治体における市民協働の実態、職員の人材育成の状況、抱えている課題などを網羅的に把握し、今後の自治体行政の活性化と協働推進のための基礎資料を得ることを目的としている。
1.2 調査方法
| 調査対象 | 全国の市区町村(政令指定都市の区を含む) |
|---|---|
| 調査時期 | 2022年2月 |
| 調査方法 | 郵送配布・郵送回収 |
| 回答主体 | 市民協働担当部局 |
| 有効回答数 | 805自治体 |
| 使用データ | 2021全国自治体調査.xlsx (N=805) |
本報告書では、回収された805自治体の有効回答データを基に単純集計および分析を行っている。データには回答者の属性(自治体名、部署名等)および調査票の問1から問33までのすべての回答が含まれる。
第2章 地縁的コミュニティの活動状況
本章では、回答自治体の基本属性を確認するとともに、地域コミュニティの基礎となる地縁型組織(自治会・町内会等)の状況について分析する。
2.1 回答自治体の基本属性
表 2-1: 人口規模の分布 (V1)
| 人口規模階級 | 度数 (n) | 構成比 (%) |
|---|---|---|
| 1万人未満 | 165 | 20.5 |
| 1万人以上 3万人未満 | 212 | 26.3 |
| 3万人以上 5万人未満 | 138 | 17.1 |
| 5万人以上 10万人未満 | 145 | 18.0 |
| 10万人以上 30万人未満 | 112 | 13.9 |
| 30万人以上 | 33 | 4.1 |
| 合計 | 805 | 100.0 |
(1) 非常勤等をのぞいた正規の職員数
(2) そのうち、市民協働に関係する担当部署の職員数
表 2-2: 正規職員数の分布 (V2.1)
| 職員数階級 | 度数 (n) | 構成比 (%) |
|---|---|---|
| 100人未満 | 113 | 14.0 |
| 100人以上 300人未満 | 276 | 34.3 |
| 300人以上 500人未満 | 158 | 19.6 |
| 500人以上 1,000人未満 | 142 | 17.6 |
| 1,000人以上 | 116 | 14.4 |
| 合計 | 805 | 100.0 |
表 2-3: 市民協働担当部署の職員数 (V2.2)
| 職員数 | 度数 (n) | 構成比 (%) |
|---|---|---|
| 1人〜3人 | 245 | 30.4 |
| 4人〜6人 | 288 | 35.8 |
| 7人〜10人 | 148 | 18.4 |
| 11人以上 | 124 | 15.4 |
| 合計 | 805 | 100.0 |
結果の記述: 回答自治体の人口規模を見ると、3万人未満の小規模自治体が全体の約47%を占めている。一方で、30万人以上の大規模自治体は4.1%に留まる。 職員数についても、300人未満の小規模組織が半数近くを占める。市民協働担当部署の職員数は「4人〜6人」が最も多く、次いで「1人〜3人」となっており、6割以上の自治体で6人以下の少人数体制で協働推進業務を担っている実態が明らかになった。
2.2 市町村合併の状況
表 2-4: 市町村合併の実施状況 (V3)
| 選択肢 | 度数 (n) | 構成比 (%) |
|---|---|---|
| 1. はい | 508 | 63.1 |
| 2. いいえ | 297 | 36.9 |
| 合計 | 805 | 100.0 |
社会学的解釈: 6割以上の自治体が平成の大合併を経験している。合併により行政区域が広域化したことで、旧町村単位でのコミュニティ維持や、役場機能の集約化に伴う職員と住民の距離感の変化が、協働のあり方に影響を与えている可能性がある。
2.3 地域コミュニティの構造
表 2-5: 地域コミュニティの単位設定 (V4)
| 選択肢 | 度数 (n) | 構成比 (%) |
|---|---|---|
| 1. 地縁型住民自治組織(自治会・町内会等) | 258 | 32.0 |
| 2. 小学校区程度 | 314 | 39.0 |
| 3. 中学校区程度 | 48 | 6.0 |
| 4. 旧市町村単位 | 89 | 11.1 |
| 5. その他 | 96 | 11.9 |
| 合計 | 805 | 100.0 |
結果の記述: 地域コミュニティの単位として「小学校区程度」を設定している自治体が最も多く39.0%、次いで「地縁型住民自治組織」が32.0%であった。この2つで全体の7割強を占める。「小学校区」は、防災や学校教育との連携など、新たな地域活動(地域運営組織等)の基礎単位として採用されるケースが増えていることを示唆している。
表 2-6: 自治会・町内会加入率の分布 (V5)
| 加入率階級 | 度数 (n) | 構成比 (%) |
|---|---|---|
| 90%以上 | 121 | 15.0 |
| 80%以上 90%未満 | 169 | 21.0 |
| 70%以上 80%未満 | 193 | 24.0 |
| 60%以上 70%未満 | 153 | 19.0 |
| 50%以上 60%未満 | 97 | 12.0 |
| 50%未満 | 64 | 8.0 |
| 不明・無回答 | 8 | 1.0 |
| 合計 | 805 | 100.0 |
実務的含意: 加入率70%以上の自治体が約6割存在する一方、50%未満の自治体も約1割存在する。都市部ほど加入率が低く、地方部ほど高い傾向が一般的に見られる。加入率の低下は、回覧板による情報伝達や地域防災機能の低下に直結するため、行政としても加入促進施策の再考が求められる。
2.4 地縁型住民自治組織の実態
表 2-7: 地縁型組織の活動活発度 (V6)
| 選択肢 | 度数 (n) | 構成比 (%) |
|---|---|---|
| 1. 活発である | 89 | 11.1 |
| 2. どちらかといえば活発である | 410 | 50.9 |
| 3. どちらかといえば活発ではない | 266 | 33.0 |
| 4. 活発ではない | 40 | 5.0 |
| 合計 | 805 | 100.0 |
表 2-8: 地縁型組織の課題認識(「とてもあてはまる」+「ある程度あてはまる」の割合)
| 項目 | 肯定回答率 (%) | 平均スコア* |
|---|---|---|
| a. 活動の担い手が固定化している | 88.5% | 1.5 |
| b. 活動の担い手が不足している | 86.2% | 1.6 |
| c. 女性が活躍する場が十分ではない | 62.4% | 2.3 |
| d. 若者が活躍する場が十分ではない | 81.1% | 1.8 |
| e. 現在の地域課題に対応した活動ができていない | 54.3% | 2.5 |
地縁型組織において「担い手の固定化」と「担い手不足」は9割近くの自治体が認識する深刻な課題である。特定の役員への負担集中が、新たな参加を阻害する悪循環を生んでいる可能性がある。「活動は活発」と回答した自治体であっても、その内実は少数の固定メンバーによって支えられているという脆弱性が懸念される。
2.5 協議会型住民自治組織
表 2-9: 協議会型住民自治組織の設立状況 (V8)
| 選択肢 | 度数 (n) | 構成比 (%) |
|---|---|---|
| 1. 自治体の区域全体に設立されている | 166 | 20.6 |
| 2. 自治体の区域の一部に設立されており、今後は全区域に拡大する予定 | 76 | 9.4 |
| 3. 自治体の区域の一部に設立されており、今後は設立区域を一部拡大する予定 | 71 | 8.8 |
| 4. 自治体の区域の一部に設立されており、今後の拡大の予定はない | 94 | 11.7 |
| 5. 設立されていない | 368 | 45.7 |
| 6. その他 | 30 | 3.7 |
| 合計 | 805 | 100.0 |
結果の記述: 「協議会型住民自治組織」(地域運営組織、まちづくり協議会等)が設立されていない自治体は45.7%と半数近くにのぼる。一方、区域全体に設立されている自治体は約2割である。従来の自治会型組織から、多様な主体が参画する協議会型組織への移行は、まだ過渡期にあると言える。
第3章 ボランティア団体・NPO等との協働状況
3.1 テーマ型市民活動の実態
表 3-1: テーマ型市民活動の活発度 (V9)
| 選択肢 | 度数 (n) | 構成比 (%) |
|---|---|---|
| 1. 活発である | 64 | 8.0 |
| 2. どちらかといえば活発である | 338 | 42.0 |
| 3. どちらかといえば活発ではない | 346 | 43.0 |
| 4. 活発ではない | 57 | 7.0 |
| 合計 | 805 | 100.0 |
結果の記述: テーマ型活動について「活発である(どちらかといえば含む)」と回答したのはちょうど50%であった。地縁型組織(62%)と比較すると、テーマ型活動の活性度はやや低く評価されている。
3.2 協働事業の実施状況
表 3-2: 協働事業の実施状況 (V10)
| 選択肢 | 度数 (n) | 構成比 (%) |
|---|---|---|
| 1. 現在実施している | 451 | 56.0 |
| 2. 過去に実施していた | 64 | 8.0 |
| 3. 実施していない | 290 | 36.0 |
| 合計 | 805 | 100.0 |
3.3 協働相手となる団体(詳細分析)
(1=よく行う, 2=たまに行う, 3=あまり行わない, 4=まったく行わない, 8=組織なし)
表 3-3: 協働相手団体別の実施頻度(n=515)
| 団体種別 | 1. よく行う | 2. たまに行う | 3. あまり行わない | 4. まったく行わない | 実施率(1+2) |
|---|---|---|---|---|---|
| a. 自治会・町内会 | 32.2% | 49.8% | 15.2% | 2.3% | 82.0% |
| b. 婦人会・女性会 | 4.5% | 40.5% | 41.2% | 11.3% | 45.0% |
| c. 老人会・老人クラブ | 6.2% | 48.8% | 35.5% | 8.2% | 55.0% |
| d. 青年団・壮年団 | 2.1% | 22.9% | 42.5% | 24.3% | 25.0% |
| e. PTAなどの教育団体 | 12.5% | 55.5% | 25.8% | 5.5% | 68.0% |
| f. 公民館 | 22.5% | 39.5% | 22.1% | 12.5% | 62.0% |
| g. 趣味サークル等 | 3.8% | 44.2% | 40.8% | 9.2% | 48.0% |
| h. ボランティア・NPO | 25.2% | 49.8% | 20.5% | 3.5% | 75.0% |
社会学的解釈: 「協働」という文脈においても、最も頻繁なパートナーは依然として「自治会・町内会」であり(実施率82%)、次いで「ボランティア・NPO」(75%)、「PTA」(68%)となっている。「よく行う」という積極層に限定しても、自治会(32.2%)がNPO(25.2%)を上回っており、行政にとって地縁型組織が既存のパイプラインとして機能していることがわかる。
3.4 協働事業の推進体制
表 3-4: 事業実施前の目的共有制度 (V12)
| 選択肢 | 度数 (n) | 構成比 (%) |
|---|---|---|
| 1. はい | 268 | 52.0 |
| 2. いいえ | 247 | 48.0 |
| 合計 | 515 | 100.0 |
表 3-5: 事業実施後の評価制度 (V13)
| 選択肢 | 度数 (n) | 構成比 (%) |
|---|---|---|
| 1. はい | 188 | 36.5 |
| 2. いいえ | 327 | 63.5 |
| 合計 | 515 | 100.0 |
考察: 協働事業を実施している自治体のうち、事前の目的共有制度があるのは約半数、事後の評価制度があるのは約3分の1に留まる。多くの協働事業が、制度的な枠組みなしに属人的・慣習的に行われている可能性が高い。PDCAサイクルを確立するためには、特に評価制度の整備が急務である。
3.5 協働事業実施の意義(完全版)
表 3-6: 協働の意義に関する認識(全11項目)
| 項目 | とても あてはまる |
ある程度 あてはまる |
肯定率 (計) |
|---|---|---|---|
| a. 自治体単独による事業よりも経費を下げられる | 8.5% | 33.8% | 42.3% |
| b. 多様なサービスを提供できる | 42.5% | 49.5% | 92.0% |
| c. 住民の市民活動への自発的な参加を促す | 35.2% | 49.2% | 84.4% |
| d. 市民と行政との対等なパートナーシップを築く | 28.5% | 49.6% | 78.1% |
| e. 地域経済の活性化や雇用の促進につながる | 8.2% | 35.5% | 43.7% |
| f. 市民活動への財政支援につながる | 9.5% | 32.1% | 41.6% |
| g. 市民ニーズに的確に対応できる | 38.5% | 50.0% | 88.5% |
| h. 行政単独の事業実施の行き詰まりを打破する | 22.1% | 45.5% | 67.6% |
| i. 市民の行政運営の関心や自治意識が向上する | 35.4% | 50.0% | 85.4% |
| j. 人件費等行政コスト軽減など行財政改革が推進できる | 6.5% | 32.0% | 38.5% |
| k. 職員の意識改革が進む | 25.5% | 50.5% | 76.0% |
協働の意義として「多様なサービスの提供(92.0%)」や「市民ニーズへの対応(88.5%)」といった質の向上や民主的価値(自治意識)を重視する自治体が圧倒的多数である。一方で、「経費削減」や「行政コスト軽減」を意義として認める割合は4割程度に留まる。協働を単なる「下請け化」「コストカット手段」と捉える段階から、相乗効果を期待する段階へ意識が移行していることが示唆される。
3.6 協働の課題(完全版)
表 3-7: 協働の課題認識(全9項目)
| 項目 | とても あてはまる |
ある程度 あてはまる |
肯定率 (計) |
|---|---|---|---|
| a. 協働相手となる団体の情報が不足している | 18.5% | 49.7% | 68.2% |
| b. 協働に適した事業が少ない | 12.5% | 40.1% | 52.6% |
| c. 協働の具体的な手法に関する情報が不足している | 15.2% | 39.9% | 55.1% |
| d. 市民と行政との役割分担を決めることが難しい | 18.8% | 43.6% | 62.4% |
| e. 協働に関する職員の理解が不足している | 16.5% | 42.4% | 58.9% |
| f. 協働は希望する職員だけが行えばよいと考える職員が多い | 15.5% | 36.5% | 52.0% |
| g. 協働は担当部署の職員だけが行えばいいと考える職員が多い | 20.5% | 38.5% | 59.0% |
| h. 協働で事業を実施する時間的な余裕がない職員が多い | 35.5% | 41.0% | 76.5% |
| i. 協働による業務量の増加を好まない職員が多い | 30.2% | 40.3% | 70.5% |
実務的含意: 最大の課題は職員の「時間的余裕のなさ(76.5%)」と「業務量増加への抵抗(70.5%)」である。業務多忙の中で協働のための調整コストを捻出することが困難になっている。また、「役割分担の難しさ」や「職員の理解不足」も約6割が挙げており、意識とリソースの両面での課題が浮き彫りになった。
第4章 中間支援組織と協働推進体制
4.1 中間支援組織の設置と運営
表 4-1: 中間支援組織の設置状況 (V16)
| 選択肢 | 度数 (n) | 構成比 (%) |
|---|---|---|
| 1. ある | 312 | 38.8 |
| 2. ない | 493 | 61.2 |
| 合計 | 805 | 100.0 |
表 4-2: 中間支援組織の運営形態 (V17)
| 運営形態 | 度数 (n) | 構成比 (%) |
|---|---|---|
| 1. 公設公営 | 105 | 33.7 |
| 2. 公設民営 | 168 | 53.8 |
| 3. 民設民営 | 32 | 10.3 |
| 4. その他 | 26 | 8.3 |
4.2 制度的基盤の整備
表 4-3: 市民参加・協働に関する条例制定状況 (V18)
| 条例種別 | 制定数 (n) | 制定率 (%) |
|---|---|---|
| 1. 自治基本条例 | 225 | 28.0 |
| 2. 総合的な市民参加条例 | 142 | 17.6 |
| 3. 個別の市民参加条例(パブコメ条例など) | 385 | 47.8 |
| 4. 市民活動支援条例 | 156 | 19.4 |
| 5. その他 | 71 | 8.8 |
| 8. 条例はない | 210 | 26.1 |
4.3 協働推進指針の策定
表 4-4: 協働推進指針の作成状況 (V19)
| 選択肢 | 度数 (n) | 構成比 (%) |
|---|---|---|
| 1. 作成済み | 325 | 40.4 |
| 2. 検討中 | 98 | 12.2 |
| 3. 作成の予定はない | 382 | 47.5 |
| 合計 | 805 | 100.0 |
4.4 協働によるまちづくりの進捗評価
表 4-5: 協働によるまちづくりの進捗自己評価 (V20)
| 選択肢 | 度数 (n) | 構成比 (%) |
|---|---|---|
| 1. 進んでいる | 24 | 3.0 |
| 2. ある程度進んでいる | 258 | 32.0 |
| 3. どちらとも言えない | 362 | 45.0 |
| 4. あまり進んでいない | 135 | 16.8 |
| 5. 進んでいない | 26 | 3.2 |
| 合計 | 805 | 100.0 |
第5章 行政職員の能力・資質と人材育成
協働を推進する主体としての行政職員には、従来とは異なる能力が求められている。本章では、必要とされる能力と現状のギャップを詳細に分析する。
5.1 協働推進に必要な職員能力の分析(28項目完全版)
(2) そうした能力を育成するために研修を行なっていますか。
表 5-1: 職員能力の必要度と研修実施率(全28項目)
| 能力項目 | 必要度(A) 「とても+ある程度」 |
研修実施(B) 「行っている」 |
ギャップ (A-B) |
|---|---|---|---|
| a. 行政職員の役割や住民への影響に関する認識 | 95.5% | 75.2% | 20.3 |
| b. 業務に必要な専門的知識や技能 | 94.8% | 78.5% | 16.3 |
| c. 仕事を計画する力 | 96.2% | 65.4% | 30.8 |
| d. 計画を実行する力 | 95.8% | 62.1% | 33.7 |
| e. 問題解決力 | 97.2% | 55.8% | 41.4 |
| f. 人を説得する力・交渉力 | 96.8% | 48.5% | 48.3 |
| g. 指導力・リーダーシップ | 88.4% | 62.3% | 26.1 |
| h. 判断力 | 95.5% | 35.0% | 60.5 |
| i. 課題発見力 | 96.5% | 42.5% | 54.0 |
| j. 情報収集力(住民ニーズ等) | 94.8% | 32.1% | 62.7 |
| k. 情報発信力 | 93.2% | 38.5% | 54.7 |
| l. 企画力・発想力 | 92.5% | 52.1% | 40.4 |
| m. 資料作成力 | 90.5% | 58.5% | 32.0 |
| n. プレゼンテーション力 | 91.2% | 55.2% | 36.0 |
| o. 関係構築力 | 94.3% | 22.1% | 72.2 |
| p. IT活用力 | 75.4% | 55.1% | 20.3 |
| q. コーディネート力 | 90.5% | 21.5% | 69.0 |
| r. ファシリテーション力 | 92.1% | 25.4% | 66.7 |
| s. クレーム対応 | 95.5% | 65.2% | 30.3 |
| t. 対話力・傾聴力 | 98.5% | 45.2% | 53.3 |
| u. チーム・ビルディング | 85.4% | 28.5% | 56.9 |
| v. リスク管理 | 92.5% | 58.5% | 34.0 |
| w. ホスピタリティ・マインド | 93.5% | 62.1% | 31.4 |
| x. 協働・NPOに関する知識 | 85.2% | 18.5% | 66.7 |
| y. 政策立案 | 82.5% | 52.5% | 30.0 |
| z. 調査企画・実践 | 78.5% | 25.2% | 53.3 |
| α. データ分析・活用 | 75.2% | 28.5% | 46.7 |
| β. モチベーション | 96.5% | 58.2% | 38.3 |
「関係構築力(ギャップ72.2pt)」「コーディネート力(69.0pt)」「ファシリテーション力(66.7pt)」といった、市民と直接関わり関係性を築くためのソフトスキルの必要度は極めて高い(9割超)。しかし、これらの能力に対する研修実施率は20〜25%程度と極めて低く、必要性と育成体制の間に最大の乖離が存在する。 一方、クレーム対応やコンプライアンス(リスク管理)などの定型業務に関する研修は比較的充実しており、協働推進に特化した人材育成が遅れている現状が明らかになった。
5.3 職員の充足度
表 5-2: 協働推進職員の充足度 (V22)
| 選択肢 | 度数 (n) | 構成比 (%) |
|---|---|---|
| 1. 十分足りている | 16 | 2.0 |
| 2. ある程度足りている | 145 | 18.0 |
| 3. あまり足りていない | 419 | 52.0 |
| 4. まったく足りていない | 225 | 28.0 |
| 合計 | 805 | 100.0 |
結果の記述: 「足りていない(あまり+まったく)」と回答した自治体は合計で80.0%に達する。協働を推進できる人材の不足は慢性的な課題となっており、特に「まったく足りていない」が3割近くあることは深刻である。
5.4 機運醸成の取り組み
表 5-3: 機運醸成の取り組み状況 (V24)
| 取り組み内容 | 度数 (n) | 実施率 (%) |
|---|---|---|
| 1. 職員向けパンフレット・ハンドブックの作成 | 185 | 23.0 |
| 2. 庁内掲示板やメールなどで情報発信 | 345 | 42.9 |
| 3. 地域でのボランティア活動の推奨 | 268 | 33.3 |
| 4. 自治会・町内会に加入することを推奨 | 254 | 31.6 |
| 5. その他 | 68 | 8.4 |
| 8. 特に取り組みはない | 225 | 28.0 |
第6章 協働推進のための施策と制度
6.1 協働推進に必要な施策(11項目完全版)
表 6-1: 必要な施策の必要度認識(全11項目)
| 項目 | とても 必要 |
ある程度 必要 |
必要度 (計) |
|---|---|---|---|
| a. 市政情報の一層の公開促進 | 35.5% | 46.5% | 82.0% |
| b. 協働に関する講演会やフォーラムの開催 | 15.2% | 45.8% | 61.0% |
| c. 地域の多様な主体と職員との交流機会の充実 | 42.5% | 45.6% | 88.1% |
| d. 地域の多様な主体のネットワーク化 | 45.8% | 42.5% | 88.3% |
| e. 協働の方針や共通のルールの策定 | 32.5% | 45.2% | 77.7% |
| f. 行政職員の意識改革 | 65.2% | 28.3% | 93.5% |
| g. 市民の自治意識の向上 | 68.5% | 25.7% | 94.2% |
| h. 市民活動への資金援助 | 22.5% | 52.5% | 75.0% |
| i. 行政活動への市民の参加機会の拡充 | 32.1% | 50.2% | 82.3% |
| j. 協働に関する積極的な情報の収集・提供 | 35.2% | 50.2% | 85.4% |
| k. 協働で行う事業に関する業務情報の共有化 | 30.5% | 52.1% | 82.6% |
6.2 協働に関する制度導入状況
表 6-2: 協働支援制度の導入状況 (V26)
| 制度 | 導入数 (n) | 導入率 (%) |
|---|---|---|
| 1. 市民提案型の協働事業提案型制度 | 315 | 39.1 |
| 2. 行政提案型の協働事業提案型制度 | 124 | 15.4 |
| 3. 職員の地域貢献につながる副業制度 | 58 | 7.2 |
| 4. 庁内の協働推進員の配置 | 185 | 23.0 |
| 5. その他 | 45 | 5.6 |
| 8. 特に取り組みはない | 352 | 43.7 |
6.3 地域担当職員制度の現状と課題
表 6-3: 地域担当職員制度の導入状況 (V27)
| 選択肢 | 度数 (n) | 構成比 (%) |
|---|---|---|
| 1. 制度がある | 145 | 18.0 |
| 2. かつてあったが、現在はない | 40 | 5.0 |
| 3. 実施に向けて検討中 | 24 | 3.0 |
| 4. 現在はないが、今後検討したい | 193 | 24.0 |
| 5. 制度はないし、今後もその予定はない | 403 | 50.1 |
| 合計 | 805 | 100.0 |
表 6-4: 地域担当職員制度に対する懸念(「そう思う」+「どちらかといえばそう思う」)
| 項目 | 懸念率 (%) |
|---|---|
| a. 担当する業務内容が拡大するため、職員の負担が増え、本来の業務に支障がでる | 75.2% |
| b. 地域担当職員は、要望やクレームの一方的な聞き役となり、業務意欲が減退する | 55.4% |
| c. 職員と地域との関係が良好であれば長期間の担当となりがちで人事異動に支障が生じる | 59.8% |
| d. 団体・組織が地域担当職員に依存することになり、地域の自立に支障が生じる | 52.5% |
| e. 地域の取組意欲に格差があり、地域への対応が困難となるケースも発生する | 72.1% |
制度を導入している自治体は2割弱に留まる一方、半数の自治体は導入予定がないと回答している。導入の障壁としては、「職員の業務負担増(75%)」や「地域間格差への対応困難(72%)」が強く懸念されている。しかし、制度導入自治体では職員の地域理解や課題発見能力の向上といった効果も報告されており、運用方法(兼務か専任か、評価への反映など)の工夫が導入の鍵となる。
第7章 住民参加の手法と実態
7.1 計画段階での住民参加
表 7-1: 計画段階での住民参加手段の活用状況 (V30)
| 参加手段 | 実施数 (n) | 実施率 (%) |
|---|---|---|
| 1. 住民に対するアンケート調査 | 685 | 85.1 |
| 2. 住民への説明会や公聴会 | 712 | 88.4 |
| 3. 住民モニター制度 | 258 | 32.0 |
| 4. パブリックコメント制度 | 712 | 88.4 |
| 5. 広報誌やインターネットを通じた計画への意見募集 | 645 | 80.1 |
| 6. 「まちづくり会議」等の地区住民会議 | 385 | 47.8 |
| 7. 審議会への住民公募 | 741 | 92.0 |
| 8. 住民投票制度 | 145 | 18.0 |
| 9. 政策・事業への提言制度 | 425 | 52.8 |
| 10. ワークショップ | 364 | 45.2 |
| 11. 公聴会 | 298 | 37.0 |
| 12. 電子会議室 | 125 | 15.5 |
| 13. 首長との懇談会・タウンミーティング | 558 | 69.3 |
| 14. 日ごろの苦情や行政相談内容の集計 | 485 | 60.2 |
| 15. 住民や当事者団体等による自主的な計画検討委員会 | 245 | 30.4 |
| 16. その他 | 52 | 6.5 |
| 18. 特にない | 12 | 1.5 |
結果の記述: 計画段階での住民参加手段として、「審議会への住民公募(92.0%)」と「パブリックコメント制度(88.4%)」が最も普及している。これらは制度的に定着した形式的参加手法である。一方、対話型の「ワークショップ(45.2%)」や「地区住民会議(47.8%)」の実施率は半数以下に留まる。
7.2 実行段階での住民参加
表 7-2: 実行段階での住民参加手段の活用状況 (V31)
| 参加手段 | 実施数 (n) | 実施率 (%) |
|---|---|---|
| 1. ミニ公募債(住民参加型市場公募地方債) | 68 | 8.4 |
| 2. まちづくり・コミュニティファンド | 95 | 11.8 |
| 3. 住民の意見を踏まえたNPO等への補助金制度 | 285 | 35.4 |
| 4. 地域の自主性を尊重した助成金・補助金制度 | 512 | 63.6 |
| 5. ボランティア登録制度 | 387 | 48.1 |
| 6. 行政サポーター制度 | 225 | 28.0 |
| 7. NPO等への事業委託 | 446 | 55.4 |
| 8. NPOとの共同事業 | 340 | 42.3 |
| 9. NPOへの人的支援 | 198 | 24.6 |
| 10. その他 | 58 | 7.2 |
| 18. 特にない | 95 | 11.8 |
結果の記述: 実行段階では、「地域自主性尊重の助成金制度(63.6%)」と「NPO等への事業委託(55.4%)」の実施率が高い。計画段階に比べて実施率は全般的に低下する傾向にある。
7.3 評価段階での住民参加
表 7-3: 評価段階での住民参加手段の活用状況 (V32)
| 参加手段 | 実施数 (n) | 実施率 (%) |
|---|---|---|
| 1. 住民参加による外部評価 | 283 | 35.2 |
| 2. 行政オンブズマン制度 | 158 | 19.6 |
| 3. 住民満足度調査 | 500 | 62.1 |
| 4. その他 | 45 | 5.6 |
| 8. 特にない | 185 | 23.0 |
社会学的解釈: 評価段階での参加は、計画段階や実行段階に比べて最も低調である。「住民満足度調査(62.1%)」は比較的実施されているが、「外部評価(35.2%)」は3分の1に留まる。「特にない(23.0%)」も約4分の1にのぼり、PDCAサイクルの「C(評価)」が弱いことが明らかである。
7.4 ワークショップの開催状況
表 7-4: ワークショップの開催頻度 (V33)
| 選択肢 | 度数 (n) | 構成比 (%) |
|---|---|---|
| 1. 定期的に開催している | 185 | 23.0 |
| 2. 定期的ではないが開催したことがある | 385 | 47.8 |
| 3. 開催したことはない | 235 | 29.2 |
| 合計 | 805 | 100.0 |
実務的含意: 約7割の自治体が何らかの形でワークショップの開催経験を持つが、定期的な開催は2割強に留まる。ワークショップは対話型参加の有効な手法として認識されつつも、ファシリテーター不足や準備の負担から定着には至っていない現状が伺える。
計画段階での参加は制度化が進み高実施率だが、形式的な側面が強い。実行段階では助成金やNPO委託など実質的な連携が見られる。しかし、評価段階での住民参加は最も弱く、2割強の自治体が「特にない」と回答している。協働の成果を市民と共に検証する仕組みの構築が急務である。
第8章 総合考察と提言
8.1 調査結果の総括
本調査の結果、全国の自治体において「市民協働」は理念としては定着しているものの、実践においては多くの構造的な課題に直面していることが明らかになった。特に、人口減少と高齢化による「地縁型組織の弱体化」(担い手固定化88.5%、担い手不足86.2%)と、それに対応すべき行政職員の「時間的・能力的リソースの不足」(時間的余裕なし76.5%、職員不足感80.0%)という二重の困難が浮き彫りになった。
職員の意識においては、協働を「コスト削減」(42.3%)ではなく「サービスの質向上」(92.0%)や「民主的価値」として捉えるポジティブな変化が見られる。しかし、関係構築力(ギャップ72.2pt)やコーディネート力(69.0pt)、ファシリテーション力(66.7pt)といった協働特有のスキルに対する研修は圧倒的に不足しており、必要性と育成体制の間に大きな乖離が存在する。
制度面では、約4割の自治体が協働推進指針を作成し、条例整備も進んでいる。しかし、実際の協働事業においては、事前の目的共有制度(52.0%)や事後の評価制度(36.5%)の整備が不十分であり、属人的・慣習的な運営に依存している状況が窺える。
8.2 自治体類型別の特徴
人口規模別に見ると、小規模自治体(3万人未満)が全体の約半数を占めており、これらの自治体では地縁型組織への依存度が高い一方で、NPO等のテーマ型組織の活動は低調である。大規模自治体では中間支援組織の設置率や条例制定率が高く、制度的基盤は整っているが、逆に自治会加入率の低下や住民の匿名性の高さが課題となっている。
平成の大合併を経験した自治体(63.1%)では、旧市町村単位での地域コミュニティの再構築や、協議会型住民自治組織の設立が課題となっている。合併により広域化した行政区域において、職員が地域に出向き、住民と顔の見える関係を築くことの重要性が増している。
8.3 阻害要因と促進要因
【阻害要因】
- 職員の時間的余裕のなさ(76.5%)と業務量増加への抵抗(70.5%)
- 協働推進に必要な「つなぐ力」の育成不足(研修ギャップ最大72.2pt)
- 協働事業のPDCAサイクルの未確立(評価制度36.5%のみ)
- 地縁型組織の担い手不足と固定化(9割近くが課題認識)
- 協働を「担当部署のみ」「希望職員のみ」の仕事とする意識(約6割が課題認識)
【促進要因】
- 協働の意義として「質の向上」を重視する意識の浸透(92.0%)
- 中間支援組織の設置(38.8%)と公設民営運営(53.8%)の広がり
- 市民提案型協働事業制度の普及(39.1%)
- 計画段階での住民参加手法の定着(審議会公募92.0%、パブコメ88.4%)
- 「職員の意識改革」「市民の自治意識向上」を最重要施策とする認識(9割超)
8.4 政策提言
従来の座学型研修だけでなく、職員が地域現場に出ることを奨励する「越境学習」の仕組みを制度化すべきである。職員の地域活動参加を兼業規定の例外としたり、人事評価に組み込むことで、実践的な「つなぐ力」(関係構築力、コーディネート力、ファシリテーション力)を養うことができる。特に、若手職員の地域デビューを支援する研修プログラムの開発が急務である。
自治会等の地縁組織とNPO等のテーマ型団体をつなぐコーディネート機能を強化する必要がある。中間支援組織の機能強化や、地域担当職員が「つなぎ役」となることで、担い手不足に悩む地縁組織にNPOの専門性を取り入れるといった新たな協働モデルを創出できる。特に、防災、子育て、高齢者支援など、テーマ型の専門性が地縁型の基盤と結びつく分野での協働促進が有効である。
「聞くだけ」のパブリックコメントや審議会から、早期段階からの対話(ワークショップ等)や、事業評価への参画へと住民参加の質を転換すべきである。計画段階での参加は制度化が進んでいるが、評価段階での参加が弱い(外部評価35.2%)。これにより、住民の当事者意識(オーナーシップ)が醸成され、持続可能な地域づくりの基盤となる。
協働事業において、事前の目的共有(現状52.0%)と事後の評価(現状36.5%)を制度として義務化し、協定書やチェックシートを標準化すべきである。これにより、属人的・慣習的な運営から脱却し、事業の質の向上と説明責任の確保が可能になる。特に、相互評価(行政と市民双方が評価し合う)の仕組みは、対等なパートナーシップの構築に不可欠である。
8.5 実務担当者への具体的提案
【すぐに取り組める施策】
- 職員向け協働ハンドブックの作成と庁内共有(現状23.0%)
- 協働事業の事例集(成功例・失敗例)の作成と庁内研修での活用
- 若手職員による「地域づくり応援隊」の結成と地域イベントへの派遣
- 協働事業における簡易版の協定書テンプレートの作成
- 中間支援組織との連携強化(窓口の明確化、定期協議の場の設置)
【中長期的な改革の方向性】
- 人事評価制度への協働実績の反映(地域活動、NPO連携等)
- 地域担当職員制度の導入(兼務型から開始し、評価手法を確立)
- 協働推進員の庁内配置と部局横断チームの編成
- 市民提案型協働事業制度の創設と財源確保
- ファシリテーター養成講座の定期開催(職員・市民合同)
8.6 本調査の限界と今後の研究課題
本調査は量的調査(単純集計)であり、各自治体の具体的な成功事例や失敗経験、職員個人の意識や行動の詳細については把握できていない。今後、以下のような研究が必要である。
- 協働先進自治体への事例調査(質的研究)
- 職員個人を対象とした意識調査と能力評価
- 協働事業の効果測定(アウトカム評価)
- 住民側からの協働評価(行政との協働満足度調査)
- 地域担当職員制度の導入効果の検証
8.7 結語
協働はもはや「選択肢の一つ」ではなく、自治体運営の「OS(基盤)」である。本調査で明らかになった課題—職員の時間不足、つなぐ力の育成不足、地縁組織の弱体化—は、行政のあり方そのものの変革を求めている。
しかし同時に、協働の意義を「質の向上」として捉える意識の広がりや、制度整備の進展といった希望も見えている。職員一人ひとりが地域のパートナーとしての意識を持ち、制度と意識の両面からの改革を進めることが強く望まれる。
人口減少時代において、行政と市民が「共に考え、共に創る」協働のまちづくりこそが、持続可能な地域社会の鍵となる。本報告書が、全国の自治体における協働推進の一助となれば幸いである。
付録A:主要変数一覧
本報告書で使用したデータセット(2021全国自治体調査.xlsx)に含まれる変数
V1:人口、V2:職員数、V3:合併、V4:コミュニティ単位、V5:加入率、V6:地縁活発度、V7:地縁課題(a-e)、
V8:協議会組織、V9:テーマ型活発度、V10:協働実施、V11:協働相手(a-h)、V12:目的共有制度、V13:評価制度、
V14:協働意義(a-k)、V15:協働課題(a-i)、V16:中間支援組織、V17:運営形態、V18:条例、V19:指針、V20:進捗評価、
V21:職員能力・研修(a-β 28項目)、V22:職員充足度、V23:職員充実策(a-e)、V24:機運醸成、
V25:必要施策(a-k)、V26:制度導入、V27:地域担当職員制度、V29:制度への認識(a-e)、
V30:計画段階参加、V31:実行段階参加、V32:評価段階参加、V33:ワークショップ
2022年2月実施
金沢大学人間社会学域地域創造学類
地域社会学研究室